診療グループ

肝臓グループ

肝臓グループについて

肝臓グループではウイルス性肝疾患、脂肪性肝疾患(SLD)、自己免疫性肝疾患などを背景とした軽度の肝機能障害から肝硬変に至るまであらゆるステージの肝疾患を診療しています。当院では伝統的にウイルス性肝疾患の患者様が多く、特にB型肝炎の症例数は全国でも有数であり、その臨床データを元に種々の研究・発表を行っています。また近年増加している脂肪性肝疾患についても、肝臓の線維化評価として非常に有用な非侵襲的肝硬度測定(FibroScan®)を導入し、積極的なハイリスク症例の囲い込みを行っています。さらに、肝疾患の中でも特に重要な原発性肝癌に対しては、ラジオ波焼灼療法やエタノール局注療法といった局所穿刺療法や肝動脈塞栓療法(TACE)を多数の症例に行っています。近年では、複数の薬剤が使用可能となった全身薬物療法(免疫チェックポイント阻害剤、分子標的治療薬)も積極的に導入しています。これらの治療を組み合わせた集学的治療を行い、可能な限りConversion治療を目指しています。また保険適応となった陽子線治療も名古屋市立大学医学部附属病院西部医療センターと連携し積極的に行っており、豊富な症例数を有しています。高度専門医療を提供する大学病院として患者様個人の背景や病態を考慮し、グループ内でカンファレンスを行い、様々な選択肢がある肝細胞癌治療の中から最適な治療を検討し患者様へ提供しています。

主な対象疾患(肝臓)

  • 急性肝炎、劇症肝炎
  • 慢性肝炎(B型肝炎、C型肝炎、脂肪性肝疾患、その他)、肝硬変症
  • 自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎
  • 薬物性肝障害
  • 肝膿瘍
  • 原発性肝癌(肝細胞癌)
  • 肝良性腫瘍
  • 門脈圧亢進症

研究

当グループではB型肝炎の研究が盛んであり、保存血清を用いて種々のデータを測定し、多数の論文を発表しております。また関連施設と連携し、多施設共同研究として、肝細胞癌の薬物療法例など多数のデータを蓄積し、解析・発表しています。近年増加傾向にある脂肪性肝疾患については、実験病態病理学講座と共同で脂肪肝炎ラットモデルを用いて線維化メカニズムの解析や発癌に関する基礎研究を行っております。多様な肝疾患における未解明の病態メカニズムを一つでも明らかにするため、日々データの収集や解析、研究を進めており、新たに得られた知見は日常診療において患者様へ還元しています。

当グループにおける最近の研究

名古屋市立大学消化器・
代謝内科学 肝臓グループを
中心とした多施設臨床グループの立ち上げ

名古屋市立大学消化器内科の関連病院と広く共同で、主に若手医師の成長を主眼においた臨床研究グループを立ち上げ、現在までに広く活動を行っています。

SLSGにおけるこれまでの成果

  • Suzuki T, Matsuura K et al. Outcome of nucleos(t)ide analogue cessation in patients with treatment for prevention of or against hepatitis B virus reactivation, Hepatol Res. 2023
    B型肝炎再活性化予防のために投与した核酸アナログ製剤の中止後、再導入が必要となる病態への進展割合は低い。
  • Sho M and Suzuki T (co-first author ), Matsuura K et al. The neutrophil-to-lymphocyte ratio at the start of the second course during atezolizumab plus bevacizumab therapy predicts therapeutic efficacy in patients with advanced hepatocellular carcinoma: A multicenter analysis, Hepatol Res 2023
    肝癌の一次治療であるアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法投与患者における、投与開始3週後の好中球リンパ球比が予後を予測する。
  • Suzuki T, Matsuura K et al. Serum CXCL10 levels at the start of the second course of atezolizumab plus bevacizumab therapy predict therapeutic efficacy in patients with advanced hepatocellular carcinoma in BCLC stage C: A multicenter analysis, Cancer medicine 2023.
    肝癌の一次治療であるアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法投与患者の投与開始3週後の血清CXCL10値がBCLC stageCの肝癌患者の治療効果を予測する。
  • Suzuki T, Matsuura K et al. The prognostic nutritional index at the start of the second course of atezolizumab plus bevacizumab therapy predicts therapeutic efficacy in patients with advanced hepatocellular carcinoma: A multicenter analysis, Oncology. 2024
    肝癌の一次治療であるアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法投与患者における、投与開始3週後のPNI(prognostic index)が予後を予測する。
  • Suzuki T, Matsuura K et al. Serum interleukin-6 levels at the start of the second course of atezolizumab plus bevacizumab therapy predict therapeutic efficacy in patients with advanced hepatocellular carcinoma: A multicenter analysis, Journal of Gastroenterology and Hepatology. 2024
    肝癌の一次治療であるアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法投与患者における、投与開始3週後の血清IL-6値が予後を予測する。

肝細胞癌における全身化学療法の効果予測因子の開発

上述した関連病院グループ(SLSG)や他施設と共同で、肝細胞癌の全身薬物療法の効果予測因子の探索を臨床データや血液を使った検討をこれまでに複数行っており、今も継続的に行っています。

ウイルス性肝炎における
病態解明

古くから我々は臨床データや保存血清を用いてウイルス性肝炎についての検討を行っており、今も継続的に行っています。

Kawamura H, Matsuura K et al. Efficacy of antiviral therapy for the prevention of mother‐to‐ child transmission of hepatitis B virus and the risk of postpartum hepatitis flare after discontinuation of antiviral therapy, Hepatol Res 2024
臨床研究として以前から行っていたHBVキャリアの妊婦にたいする母子感染予防目的の核酸アナログ内服の有用性やリスクにつき報告した。

NASH動物モデルを用いた
新規治療薬の開発

現在、実験病態病理学講座と共同で、脂肪肝炎ラットモデルを用いてMASLD/MASHに対する新規治療薬の開発、MASHにおける炎症・線維化メカニズムの解析や発癌に関する基礎研究を行っています。

若い先生方へのmessage

まだ志望する診療科を決めていない研修医や医学生の皆様へ

消化器内科は、身体の中の複数の臓器を対象とした幅広い疾患を専門とする、非常にやりがいのある科です。
内視鏡をはじめ、ドレナージや生検などの穿刺処置やカテーテル治療まで、豊富な手技を行うことができます。近年、AIの進歩が著しく、近い将来診断については人間の能力を上回るかもしれません。しかし、消化器内科では手技から始まり、診断、治療へと進んでいきます。皆様が活躍できる場が無限にあります。
ぜひ消化器内科で一緒に働きましょう。

若手消化器内科医や消化器内科を志望する研修医・医学生の皆様へ

さらなるサブスペシャリティとして肝臓領域を専門とし、私たちと一緒に働きませんか?
肝臓病学・肝臓専門医の良いところをいくつか挙げますので、肝臓に興味を持っていただけると嬉しいです。

肝臓専門医の全国的な不足

チャンスです

全国的に肝臓専門医は減少しています。一方で、将来人口減が予想される中で、医師は相対的に増加傾向にあります。一人の医師として生き残るためには、他の医師とは違う専門性が求められます。肝臓疾患は無くなりません。肝臓専門医が減少している今こそ、一人あたりの経験症例も増加し、成長できるチャンスです。

C型肝炎の根治により肝臓領域は今後下り坂じゃ・・・

違います

DAA治療によりC型肝炎ウイルスはほぼ排除できるようになりました。確かに肝硬変患者は一時期に比べ減少したように感じますが、まだB型肝炎は排除できず、脂肪性肝疾患の中でMASLDは人口の20-30%の有病率が予想されています。そして非B非C型肝細胞癌も増加傾向にあります。肝臓病学にはまだ解決すべき問題が山積みです。

肝細胞癌の治療は患者が10人いたら10人とも違う

奥が深い

患者様の背景(ADL、併存疾患、肝予備能など)や腫瘍の位置・大きさにより、治療方針は大きく異なります。他の悪性腫瘍と異なり、治療後概ね5年といった区切りはありません。肝臓がある限り、患者様は生涯にわたり再発と向き合っていく必要があります。そのため、将来的な肝予備能を考慮しながら治療を組み立てます。これらのことを総合的に判断し、治療方針を決定するため、一人一人異なった治療が求められます。また、今後は現在ある治療(RFAやTACE、薬物療法、手術など)を組み合わせ、今までCRを得られなかった症例も集学的治療により根治を目指す時代になっていきます。内科だけでも根治を目指すこともでき、とてもやりがいがあります。

高血圧や脂質異常症など一般内科の診療知識も

得られます

MASLDのCardiometabolic criteriaには高血圧や脂質異常、糖尿病が含まれます。もちろん、肝臓を専門とする医師にもこれらの知識が求められます。消化器領域以外の疾患にも精通することで、一人の医師としてより深みが増し、成長できます。将来的に開業を考えている先生方にも、一般内科の知識は非常に重要です。肝臓を専門としながら、これらのことも学べます。

他診療科からも頼りにされる

肝障害はよく起こります

外来通院中、あるいは入院中の患者様の肝障害はcommon diseaseであり、たくさんのコンサルトがあります。また近年のゲノム医療の進歩により、肝転移巣からの肝腫瘍生検依頼も頻繁にあります。他診療科からも肝臓を専門とする医師は求められています。肝臓専門医の活躍の場は広いです。

当グループでは、臨床と研究の両方に力を入れながら、ワークライフバランスも重要視しています。消化器内科の他の領域と比較して救急対応が少ない傾向にあるため、日常診療でも臨床業務に追われすぎることなく、研究に時間を割くことができ、プライベートも充実して過ごせます。医師として第一線で長く働くためには、ワークライフバランスを整えることが非常に重要です。全ての医師にとって働きやすい環境を整えるよう、グループ内でも工夫を重ねています。肝臓に少しでも興味がある方、肝臓病について幅広い知識や技術を身に付けたい方、ぜひ私たちと一緒に働きましょう!

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